日本財団 図書館


 

出油の漂流状況等を考慮して焼却処理の実施を検討していく必要がある。
海面は波浪によって波傾斜を生じ、海面上にある流出油は波傾斜の運動と同様の挙動を示すが、流出油のある海面は他の海面と異なり若干波の高さが減じられる。波傾斜は波高/波長で表されるが、海洋では1/8になると砕け波となる。
このような状態では、焼却処理を行うことは不可能であり船舶の航行にも危険な海面の状況となる。
海外における原油の海上焼却には、?エクソン・バルディーズ号事故時の焼却処理、?ノルウェーでの海上実験、?米国・カナダ共同のニューファンドランド沖合の海上実験があるが、?と?は耐火オイルフェンスで流出油を囲った中で実施されている。これらの焼却処理の際の波浪状態は、?と?が全く静穏な海面であり、?が波高30cm(ビューフォート風力階級2程度、風浪階級2程度)で実施されている。このノルウェーの海。上実験では、原油は新鮮なスタフォード原油及び蒸発した原油を用いているが、油の焼却にはほとんど波の影響はなかったと報告されている9)。
一方、耐火オイルフェンスの海上試験によると、短周期の風波による波高が1m以下(ビューフォート風力階級3程度、風浪階級3程度)の海象条件の場合にのみ適用できると報告されている。このことは、オイルフェンスで囲まれた油層の上下動が激しく、燃焼状態が安定しないためであると考えられる。
以上により、安全確保が必要な海上での焼却処理は、波高が1m程度であれば適用可能と推測される。

 

1)S-R-Hanna,R.J.Paine and L-L-Schulman(1984)Boundary Layer Meteorology,58,pp229
2)船舶排ガスの環境への影響と防止技術の調査報告書、シップ・アンド・オーシャン財団、平成4年3月
3)J.Z.Holland,(1953)U.S.Atomic Energy Comm. Repoort ORO-99,Washington,D.C.pp589
4)D.D.Evans,et al.,(1987)Combution of Oil on water, NBSIR-86/3240
5)Alan A.Allen, Ronald J.Ferek, Advantages and Disadvantages of Burning Spilled Oil.
6)大規模流出油防除技術の研究開発報告書、pp23−24、海上災害防止センター、平成8年3月。
7)本報告書付録「焼却処理に関する実験」、
8)同上、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION